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CLAN TALK

2025.01.13

【連載】ただの渋谷で飲んでるご機嫌な人かと思いきやなんかめちゃくちゃ面白くて実はすごいんですけど誰ですかあなた?

vol.4 庄司明弘さん(404 Not Found プロデューサー/Music)

取材:谷井百合子

 「『インターネットで世界に発信』って、僕はこれ、正確に言うと「世界からアクセス可能な場所にコンテンツを置こう!」だと思っています。例えば絵を描いて、『よし、YouTubeにアップした、世界の連中が見てくれる!』わけではなくて。『見てみたいと思われるようなコンテンツをがんばって作ると、世界中から見てもらえるようになるかもしれない』というのが正しくて、世界にだろうが日本にだろうが、リアルだろうがネットだろうが、まずは、知り合いから始まる……ということを思い知るのは、自分も含めてなかなか良いことなのかと思っています。期待しすぎると“砂漠に水を撒く感”が激しいのもインターネットかと。視聴回数3回だと、世界には、3人しかいないのかよ、という話になる(笑)」

確かに〜!と、のっけから激しく頷くしかない話をしてくれたのは、渋谷サクラステージ4階にあるクリエイターの遊び場「404NotFound」のプロデューサー・「渋谷あそびば制作委員会」の理事、庄司明弘さん。

「僕は裏方の立場なので、写真は遠慮しておきます」という慎み深い庄司さんは、温厚そうで優しい笑顔の男性。「センスはヘアスタイルに出る」の持論の通り、ひと目でセンスある方とわかってしまったのですが、実は私、センス恐怖症。ちょっと緊張しながら(なぜかある)こたつに座ってのお話となりました。

  「作品」が人を呼び寄せる場所をつくる

「だからそれよりも、街の中に偶然人が見てくれる場所を作れたら、見てくれる人の顔も見れるし、過度な期待もしないかなと」

街の中に、偶然?

「オープンな場所に、無料で、自分の作品を展示して見てもらう場があれば、展示している人はここに寄りますよね。またそれを見て『羨ましいな、俺もできないかな?』と思う人も来れば、『何やってるんだろう?』って、興味本位だけの人も来ます。リアリティのある最初の3人です。

誰かが作ったそのものが磁石みたいな役割を果たして、いろんな理由で人が集まる場所を作っていく。僕にとっては、それがここをやる一番の理由です」

なるほど。オープンして半年ちょっとで、すでに始まっているのですね。

「ものを作っている人たちって『交流』を求めているんだなと思います。作ったら自分以外の人に、見てほしい、知ってほしい。あとは質問されたり、逆に教えてもらったり。人との出会いや接点を求めてる。たとえ人見知りでも、部屋にこもり気味でもです」

なるほど。

「僕も偶然の出会いで救われたという経験がたくさんあるので、そんな気持ちになるのかもしれません」

過去のご経験から?興味深いです。

庄司さんご自身のことをお聞かせください。

出会いに恵まれすぎな人生

「僕の生まれは茨城県です。日立市という、いわば企業城下町。地元の大学に行って、地元の日立製作所の関連会社に入るとか、市役所で働くとか学校の先生になるというルートを、親戚一同イメージしているような平和過ぎる環境でした」

東京へはいつ?

「高校卒業後、作詞家を目指して東京に出てきました。『上京』と言われていた時代です」

作詞家!?

「コピーライターという職業にも憧れたのですが、作詞家を選択しました。どうして作詞家を選んだのかは忘れてしまったのですが、今でもリアルに覚えているのは、高校受験の頃ラジオから流れてきた井上陽水さんの『心もよう』という曲。イントロのギターから入ってくる歌詞に、『なんだこれ?』と雷が落ちるみたいな衝撃を受けて。高校時代は、ずっと吉田拓郎さんや伊勢正三さん、財津和夫さんの歌詞にしびれまくってました(笑)。大学に行くより、音楽業界の近い東京に出たいと思って」

上京して作詞家に、なれました…?

「東京生活は、時給530円のアルバイトから始めましたけど、数十曲は作品になりました」

よかった。

「作詞家になれたとは言えませんが、僕が一番たくさん歌詞を書かせていただいたのは1980年代半ば、バブルの時代。僕は作詞を続けながら、26歳のときに会社を作ることを決意して、音楽制作会社を始めました。でも仕事が来なくて、増えたのは借金だけ、でしたが」

作詞をしながら社長に!

「28歳くらいのある日、とある歌手の方に呼ばれました。忘れもしない、僕はダブルのスーツにネクタイをして鞄を持って行ったら、『そういう仕事をしていくのか、詩を書くのか、いい加減決めないとだめだよ』って。厳しくは言ってなかったはずですが、僕はものすごく怒られた気がして。自分では一流の作詞家になれる才能がないと感じていたので、作詞家の道をあきらめる大きくて大事な決断を後押ししてもらえた、ありがたい言葉でした」

その方が聞きたかった決断ではなかったかも……。

「そうするともう、今さら大学行っても遅いですし恥ずかしくて地元に帰れないじゃないですか。高校生の自分が決断したことへのつじつま合わせが本格化するのは、そこからですね。会社に集中しようと決意して、大学じゃなくて、実際の会社で経営を学習することになりました。厳しい授業でした(笑)」

そこから、経営者の道へと進んだわけですね。

「ビッグ過ぎてここで名前を出すのははばかられるのですが、僕の人生にリアルに影響をあたえてくださった方が、何人かいます。ライブハウスで隣に座っていたり、バイト先の経営者だったり……。その頃は平和な時代で、電話番号を交換して、僕の人生の相談を聞いてもらったりしていました。今はもうさすがに連絡先も知らないですが。

でもね、そのうちの一人は、僕がタワーレコードにお世話になっていた時、ひょんなことから東京ドームのコンサートの楽屋で再会しましてね。びっくりしてましたよ。『庄司か……!?』って(笑)」

東京に出て、とんでもない方々とよくつながりましたね。

「出会いに恵まれていると言えばそれまでですが、どうも恵まれすぎている感が……。そう、僕って本当に、ラッキー過ぎるんですよ。だから、いい出会いがあるたび1〜2週間、階段を降りるときは手すり側を歩く、とかしてます。僕だけそんなラッキーなわけない、どこかでつじつま合うはずだって疑って(笑)」

ラッキー体質なんですね。あやかりたい。

「つじつま合わせ」で生きる

「僕は結局、つじつま合わせのためにずっと必死で生きてる気がしています」

つじつま合わせ?

「あの時大学に行っていれば、とか、地元に残っていたら、とか、ひとつでも本気で後悔してしまったら、すべてがバタバタってひっくり返って、後悔になってしまう可能性がある。だから、思った通りの生き方をする、面白おかしく生きるんだ、みたいな気持ちが根底に、かなり強めにあります。だから、ビッグアーティストやレジェンド経営者の方にも声を掛けられたんだと思います」

なるほど。

「だからこそ、こういう『遊び場を作ろう』みたいな話にも乗らせてもらう。想像もしていなかったことをやることに貪欲なのは、後悔したくない気持ちの裏返しです。

若いクリエイターやスタートアップの人たちに出会うことによって、予想外のプロジェクトに誘っていただいたり、巻き込んでいただいたり。一緒に悩んだり考えたりする大人を探している若者に出会った時は、僕が一番喜んでいます」

みんなが実力で食える世界を作りたい

「ところで人って、3通りに分かれてそうだと最近思うんですよ」

3通り、ですか?

「クリエイターの人たちに多い、引きこもりがちで自信喪失しがちの、いわゆる会社勤めにはむいてなさそうなタイプ。それと社会性やコミュニケーション力が高めで、組織で仕事をする会社勤めが向いているタイプ。そして中間の、要領よくどちらのタイプとも話せるタイプ。その3種類で組めるチームがベストっぽいと確信し始めてます」

庄司さんは?

「中間の、一番要領のいい役がプロデューサーにむいていると思っています。プロデューサーって、真面目な会社員とは真面目さが違うように思いますし、一見くだらない遊びに思えるクリエイターの遊び時間で一緒にはしゃげるみたいな」

遊び?

「『お前、本気で言ってんの?』っていうようなことも、『お、ちょっとやってみよう』って。否定しない」

なかなかできない気がします。

「どんなに妙なことを言われても、真剣に聞いてみる癖はついてるかもしれないですね。『お、いいね』で盛り上がって、一生懸命一緒に考えていたら『庄司さんといろいろ話してたら、やっぱり難しい気がしてきました』ってなる。そういう経験もいっぱいありますよ」

おもしろい。

「人の人生って無責任な言い方ですけど、その人が本気になれるかどうかが大きなエネルギーというか、すべてじゃないですか。一生懸命聞いて、実現できそうな可能性が見えてきたら、お手伝いすることで自分も面白くなるかもしれない、っていう感覚は常にあります」

本気になれるかどうか、がまず一歩。

「人は、あそびの時が一番本気でしょうから、そこからお付き合いが始まり、サポートした人が輝いてくれて、その人たちが自分の実力で食える世界を作りたいと、本気で思っています。僕が好きなクリエイターさんたちに『庄司さんとやってよかったです』って褒められたいからやっているし、『よかったろ、俺とやって』って言えたら、いよいよ高校時代の決断のつじつまが合うんだろうと思うんです(笑)」

声を大にしていいたいです、大志を抱く若者たちよ、庄司さんのもとへ!

「今日、いろんなことを聞いていただけて思ったんですが、考えてみると、僕は若い人たちがラッキーを増やすことに協力してあげれないかなぁって思っているのかもしれません。若者たちが自分では出会えないような、いろんな職や立場(役割)の人たちと、僕が出会っておく。そうすれば、全部パスして(つないで)あげられる。

ここがクリエイターの人たちにとって“ラッキー”を探しに来る場所になったら最高ですね!404 Not Foundを“ラッキー”に出会える場所に育てて行きます」

「ステージとなる」にふさわしい渋谷という街に作られた、オープンで無料、誰にでも自由に見てもらえる本質的な「あそび場」を、大好きなことで「人それぞれのつじつま合わせ」出来る場所にしていく。

偶然通りかかった人が、何かのタイミングで戻ってきて、1年後、3年後、あるいは5年後に、誰と誰がどうして、どんな広がりを見せるのか。

定期的に確かめに来ようと思います。

Player

谷井百合子

ライター

谷井百合子

ライターを副業とする派遣社員。腰の軽さと興味に乗っかる行動力だけが自慢です。興味のあるジャンルは、本、料理、工芸、建築、など。ご縁で出会った美味しいものや素敵な人を、テンション上がった気持ちをのせてご紹介、できるようになりたいです。


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